2007/05/04

万年筆のお医者さん 川口明弘先生


あっという間に5月突入。
久々に万年筆な出来事について書いてみま~す。



川口明弘先生は、大好きな万年筆のお医者さんです。
ちょうど一年ほど前に家で発掘した古い万年筆を見事に復活させてくださったのも先生でした。
先生は日本中の多くの万年筆ファンにとって大切な存在であり、また、
私が毎日万年筆を使うようになったのも、川口先生との出会いがきっかけでした。

私が最初に手にした本格的な万年筆は、写真の
PARKER SONNET
ある年の誕生日にいただいたものです。
黒いボディー、銀色の金具、飾りや模様はなし。

シンプルで、飽きず、お気に入り。

しかし、です。

使い出してみると、肝心の書き味があまりよくなかったのです。
ほんの少しなのですが、ペン先の金属がカリカリとひっかかる感じ。

…そういえば自分で試し書きしていません。(←致命的)

初めは頑張って使っていましたが、これならボールペンやシャープペンのほうが楽だなぁ、
という感想で、程なく使わなくなってしまいました。

それから何ヶ月か、もしかしたら年単位で時間が経ったでしょうか。
万年筆好きな友人につきあってセーラーのペンクリニックに行くという希有な機会がありました。
会場は新宿伊勢丹の文房具売り場だったかな?

そこにいらっしゃったのが、冒頭の川口先生。
せっかくの機会なので、私も自分の万年筆を診ていただきました。

先生の仕事道具はとてもシンプルです。

小さな拡大鏡
水の入ったインク壷
サンドペーパー

通常はこれだけです。
(症状によって、ペン先を分解しなければならない場合は別の工具もあります。)

ペン先の調整って、コンマ何ミリの世界なのですが、先生は基本的に「素手」で直されます。
どうやっているか…説明するのは難しいです。
とにかく仕事が速く、よく観察しようにも、あっ、という間に「書いてみて」と手もとに返されるのです。

「ここが調子悪いので、もっとこうして欲しいのですが。。。」
というように、要望を聞く治療ではなく、
ただ「あるべき姿に戻す」治療という印象。

「こうであるのが当たり前」な状態にあっという間に仕上げます。

「書いてみて」と言われて書いてみたその書き味。
あの初めのビックリは忘れられません。
紙の上を「滑って」いくその感覚。

気持ちいい。
どんどん書きたくなる。

同じペンがあんなに変わるなら、もっと早く来ればよかったと思いました。
これがこのペンの、本来あるべき姿。。。

思うに、たとえば古来使われてきた「筆」というものも、
墨をたっぷり含んでいればするすると紙の上を滑ります。
「鉛筆」も、筆圧はあまりいらない、むしろ筆圧をかけすぎると折れてしまう筆記具です。

シャープペンシルが普及してから学生の字体が変化した、というのは有名な話で、
「シャープ文字」というのも存在する現代ですが、このシャープ文字は紙の「滑り」よりも、
むしろ「ひっかかり」を逆に利用して書かれる文字の書き方のような気がします。

シャープペンやボールペンなどの筆記具の普及で、
鉛筆を削る手間は省けたかもしれませんが、実はそれらは筆圧の強い人、
肩こりや姿勢の悪くなった人などを増やしているようです。
また、正しい文字を書けない人も増えています。
…が、筆記具が変われば字体、ひいては文字が変化するのは当然のことかもしれません。

そんなシャープ文字に近い文字を書いていた私でしたが、
万年筆を使い出してから、…いや、川口先生にお会いしてから、
…字が上手くなったとまでは言いませんが、
とにかく手書きで字を書くという機会そのものが増えました。
だって(書き味のよい)万年筆は紙の上をするすると滑ってくれるので、
字を書くのがもう面倒ではなくなったのです。

手書き文化の衰退は、書くのが「疲れる」ためでもあるのだと、その時私は初めて知りました。

「でも川口先生のような先生がどこにでもいらっしゃるわけじゃないんでしょ?」
もちろん、そうなのですが、そこは心配いりません。
川口先生はあくまでお医者様で、健康であれば行かなくてもよいのです。
(私はもっと気軽に行っていますが。)

実際に万年筆を買うときに書き味を試させてもらって、
自分で納得のいくものを買えば大丈夫です。
(ちなみに国産のものの方が断然お薦めです。
日本語にあったペン先の作りになっているからです。)

4月28日夕方、久々にペンクリニックに行ってきました。
3度目の川口先生。
場所は日本橋の高島屋文房具売り場の一角。
父がすごい筆圧で曲げてしまった万年筆のペン先を代理で直していただきました。

ペン先がよくない→書けないので筆圧をかける→余計にペンが悪くなっていく、という悪循環です。
(ちなみに私が万年筆、万年筆と言っているので真似して使い始めたらしいです。(^^;)
重傷でしたが、安いステンレス製のペン先にもかかわらずものすごい書き味に仕上がりました。
またしても神業を見た感じです。
(このペンこっそりもらっちゃおうかなー。)

ついでに自分の万年筆もちゃんと診てもらいました。
調子の良いペンもさらに調子よくなってしまうのです。

そして良いペンの場合は、逆に使いこむほどどんどん良くなっていくという、
良い循環が生まれるのです。

川口先生に診て頂いたペンは、現在に至るまですべて快調です。(^^)v
もちろん、一生使い続けますよ~。